ADR(裁判外紛争解決手続) 第5回
- tanapirolawfirm
- 2015年12月2日
- 読了時間: 3分
更新日:10月10日
こんにちは、田中ひろし法律事務所です。
前回に引き続き、「街頭で声をかけられたのをきっかけに購入した絵画に関する紛争」について見ていきたいと思います。
申請人と相手方の主張は前回のブログをご覧ください。今回は、その後、国民生活センター紛争解決委員会の委員が間に立って行われた話し合いについてまとめていきます。
話し合いにおける双方の主張をまとめると以下のようになります。
まず、問題となっているリーフレットについては、それぞれ次のような主張がありました。
・相手方事業者:街頭で声をかけた際に渡したリーフレットに絵画の販売目的等を明記しており、申請人もそれを十分承知しているはず
・申請人:展示会場までは街頭で声をかけてきた女性が付き添っており、渡されたリーフレットの記載内容が目に触れる機会はなかった
また、展示会場に入ったことについても、申請人は
・展示会場は絵画の販売会場のようには思えず、絵画の販売が目的であるようには認識できなかったと主張しています。
ここでも双方の意見は一致しませんね。
街頭や展示会場でのやりとりについては、証拠となるものも少なく認識の違いを解消することは難しそうです。しかし、この問題に早く決着をつけたい、という気持ちはお互いに共通のはずです。
そこで、早期解決を図るため、
「相手方事業者が商品代金のうち95万円を申請人に返還し、申請人は本件商品を相手方事業者に返送する」という和解案が紛争解決委員によって提示されました。
結果、両当事者がこれを受け入れ、和解が成立したそうです。
支払ったのは100万円ですから、全額とはいかなかったものの95%の金額は戻ってきたことになりますね。もし、申請人の方が、クーリングオフが受付られなかったことで諦めてしまっていたら、どうなっていたでしょう。
相手方としても、表沙汰にすることなく短期間で解決できたことでかえって助かった、という面があったのではないかと思います。
ADRのポイントは、第三者である仲介人が和解案を提示する点にあります。もし、これを裁判等で解決しようとすると「本当に執拗な勧誘があったのか?」「その証拠は?」と、ひとつひとつの事柄について証拠を集めたり
それをまとめた資料を作成したりといった時間がかかり解決までにもっと長い時間と手間がかかったと想像できます。今回の場合は、執拗な勧誘があったかどうかや1つひとつのやりとりの詳細を調べることそのものは申請人にとっても相手方の事業者にとってもさほど重要ではなかったのではないでしょうか。
ADRでは、こういった詳細をいったん脇に置いて、「お互いが納得するための落とし所」を探ることに力を注ぐことができるわけですね。
投稿者 弁護士法人田中ひろし法律事務所

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