医療機関の法人破産の問題点
- tanapirolawfirm
- 1月23日
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1 医療機関の破産
企業が経営に行き詰まったとき、「破産」という手続が選ばれることがあります。多くの業種では、破産は事業を終わらせ、債務を整理するための最終手段です。しかし、医療機関の破産は、一般の会社とはまったく違う重みを持っています。弁護士として医療機関の経営問題に関わる中で、その特殊性を強く感じる場面は少なくありません。

2 患者
最も深刻なのは、患者への影響です。病院や診療所が破産手続に入ると、原則として診療は継続できなくなります。入院中の患者や、透析など定期的な治療を受けている患者にとっては、治療が突然中断されることになりかねません。これは単なる経営問題ではなく、命や健康に直結する問題です。そのため、医療機関の破産では、行政や医師会が緊急対応に追われることも多くなります。
3 カルテ
また、医療機関が破産しても、診療録(いわゆるカルテ)の管理義務がなくなるわけではありません。法律上、カルテは一定期間保存しなければならず、患者の個人情報も厳重に守る必要があります。しかし、法人としての活動が止まる中で、誰が責任をもって管理するのかという問題が生じます。破産手続を担当する弁護士や管財人にとっても、非常に神経を使う点です。
4 医療スタッフ
医療の現場では、人材の存在が何より重要です。医師や看護師がいなければ、最新の設備があっても医療は成り立ちません。経営悪化や破産の話が広がると、スタッフが将来に不安を感じ、次々と退職してしまうことがあります。そうなると、再建の可能性があったとしても、現実には立て直しが難しくなってしまいます。
5 診療報酬
お金の面でも、医療機関ならではの問題があります。診療報酬は、すぐに支払われるものではなく、一定の期間を経て支払われます。そのため、破産時点で多額の未収金が残っていることも珍しくありません。これをどう扱うかは、一般の会社の売掛金とは異なる配慮が必要です。また、不適切な請求があった場合には、後から返還を求められることもあります。
6 医療機器
さらに、医療機器や薬の問題も見逃せません。医療機関では、高額な機器をリースで使用していることが多く、破産によって機器が引き揚げられると、診療自体が不可能になります。債権者としては当然の権利行使であっても、その影響は患者に直接及びます。
7 まとめ
こうした事情から、医療機関では「破産」はできるだけ避けたい手続とされることが多く、民事再生や事業譲渡など、別の方法が検討されるのが一般的です。弁護士としても、単に法律上可能かどうかだけでなく、地域医療や患者への影響を考えながら、選択肢を提示することが求められます。
医療機関の破産は、数字だけを見て判断できる問題ではありません。そこには、患者の生活や地域社会が密接に関わっています。弁護士の役割は、法的整理を進めることにとどまらず、その影響をできる限り小さくするための道筋を考えることにある――そう痛感させられる分野の一つです。

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